石油崩壊 2011 9 18

書名 石油崩壊
著者 多湖 敬彦  学研

 私は、石油に関しては、
昔は楽観的だったのですが、今は悲観的です。
 このサイトで何度も書いていますが、
人口13億人の中国が欧米人のような生活を望む時、世界はどうなるか、
最近は、これに加えて、
「人口12億人のインドも欧米人のような生活を望む時」が追加となりました。
 とうてい、世界は持続可能とは思えません。
ただし、中国もインドも解決策があります。
 日本の場合は、原油の運搬経路であるシーレーン(海の道)が、
インド洋、南シナ海で、中国の軍事力によって占領されるでしょう。
アメリカは、インド洋から撤退していくでしょう。
やがて、アメリカにとって、
インド洋はメリットがあるのかという議論が出てくるでしょう。
 さて、この本にも、
トリウム原子炉(トリウム熔融塩炉)のことが出ています。
ウラン原子炉に比べて、トリウム原子炉は、
安全性も高く、コストも安く、しかも小型化が容易です。
 にもかかわらず、なぜ日本ではトリウム原子炉の開発が進まなかったのか。
その原因として、筆者は、「官製抵抗」を指摘しています。
トリウム原子炉ができてしまえば、
今まで築き上げてきたウランの原子炉体系が崩壊してしまいます。
つまり、官僚の利権は消えるということです。
もちろん、官僚に群がってきた政治家、産業界も同じ運命です。
 夢の技術であるトリウム原子炉は、このまま消えてしまうのか。
ところが、最近、この分野に意外な「救世主」が現れました。
それは、中国です。
「2011年1月、中国の科学アカデミーは、
トリウム熔融塩炉の開発を行うことを発表した。
 中国は国際協力体制の下での開発ではなく、
あくまでも独自に研究開発をする姿勢を貫いている。
おそらくは知的所有権を握るのが目的だろう」
 参考までに、齋藤勝裕氏は、著著で、
「トリウムにちなんでは、もうひとつ問題があります。
それはトリウムの産出です。
現在、インドや中国はウラン資源に乏しく、輸入国です。
ところがトリウムに関しては逆になります。
インドや中国に多いのです」
「トリウム原子炉は今後、中国・インドを軸にして、
世界の原子力に大きな影響を及ぼしていくのではないでしょうか?」と指摘しています。

二つの原子炉 2011 6 5

書名 原発安全革命
著者 古川 和男  文春新書

 これは、私の思い違いになるかもしれませんが、
私の考えるところを書きます。
 トリウム原子炉が、核兵器廃絶の方法となる。
世界には、二つの原子炉があった。
それは、ウランからプルトニウムというサイクルの原子炉と、
トリウムからウランというサイクルの原子炉である。
 なぜ、前者は繁栄し、後者は廃れてしまったのか。
前者の方法では、核兵器を作るのは容易であるが、
後者の方法では、核兵器を作るのは非常に困難である。
(冷戦時代、大量の核兵器を作るのは急務だった)。
 本書によると、「原発革命」は、次の理由によります。
核燃料は、固体から液体に変える。
ウラン燃料をトリウム燃料に変える。
原発自体を小型化する。
 そもそも、原子炉は、「化学プラント」だから、
燃料の形態は、液体であるべきです。
それを固体にすると、リスクが高まる上に、
設備や装置が複雑で巨大なものになります。
その結果、保守・点検が大変なものにもなります。
液体ならば、固体燃料に比べて、設備や装置もシンプルなものになります。
 液体燃料は、技術的に可能です。
しかし、なぜ、固体燃料を続けてきたのか。
それは、液体燃料では、原子力産業が「儲からない」からだと推定しています。
固体燃料の方が利益率が高いと思われます。
 さて、トリウムのメリットは、他にもあります。
この本では、「トリウムを燃料とすれば、
プルトニウムは、ほとんど生まれない。
それどころか、『トリウム熔融塩炉』でなら、
プルトニウムも炉内で有効に燃やせる」と書いてあります。
 次に、資源の問題を書きましょう。
ウランは、特定の国に偏在していますが、
トリウムは、世界中にあると言ってよいでしょう。
 もうひとつ、人口爆発の問題を書きましょう。
人口爆発というと、食糧危機を連想しますが、
同時に、エネルギー危機でもあります。
人口爆発によって、食糧が不足しますが、エネルギーも絶対的に不足します。
 トリウム熔融塩炉から核兵器を作ることは不可能に近いと思います。
しかも、構造上、テロにも強いのです。
 21世紀の原子炉は、
「液体燃料を使う」、「トリウムを燃やす」、
「小型化する」がキーワードになるでしょう。
「万里の長城」のような送電線は、不要となるでしょう。


















































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